2003 ワールドカップハンブルグ大会

 日中23℃、夜になると10℃以下、空気は乾燥している北ドイツハンブルグ市において9月6、7日の両日、2003ワールドカップハンブルグ大会が開催された。
 東京駅と皇居の間に銀座と青山・六本木を持ってきたようなハンブルグ市中心部の殷賑を極める場所が舞台。

 7日、日曜日午後2時、気温22℃、水温18℃。出走男子64名。
 スイムは繁華街中心部にある内アルスター湖とエルベ川を結ぶ運河の一部を使用するコースを右回り2周回。トランジッションエリアはバイク、ラン共運河の横にある市庁舎前の広場。フィニッシュゲートはトランジッションエリアのとなりに設置されている。

 ウエット着用の64選手はウクライナのポリカペンコ19分44秒をトップにシェーン・リード(NZL)、山本良介と続き一つの集団のまま全員が一分以内でスイムフィニッシュ。福井27位。

 バイクコースは約20mの高低差のある一周5kmを左回り8周回。
 スタートすると、ハンブルグ中央駅に向かって500m程の緩やかなのぼり。駅前を左折、登りよりもわずかにきつい下りがある。このようなアップダウンが一周に3ヶ所。平坦部分は、最終フィニッシュ地点でもある市庁舎広場の手前約600m、クランク状の直角カーブを2箇所含む部分のみ。

 ポリカペンコを先頭にバイクスタート。ペースが速く1周目は全体にばらついた展開で全員が必死に前を追う。福井1周目18位通過。2周目に入りペースが落ち着き大きな集団が形成される。1周目のハイペースに付いていかれなかった5人が切れる。

 永留、高濱がこの中に含まれる。バイクに自信のある福井、スイム3位で上がった山本良介は集団に。2周目3周目と何回かアタックがかかる。序盤と言うこともあり集団の様子をうかがうような中途半端なアタックである。集団は落ち着かない。

 福井はこのような動きを警戒しつつ前方17〜18番手をキープ。3周目には7番手通過。山本良介は落ち着かない集団の中で30番手以降の後方待機をしていたが、4週目17km地点付近で落車。カザフスタンのドミトリー・ガーグを含む4人の選手がリスタートできずリタイア。この時点で第一集団に残った日本人選手は福井ひとりとなった。

 5周目に入り、福井はアタックのチャンスを狙っていったん後方に下げ様子をうかがう。ランスペシャリストに対し有効なタイム差を得るには中盤までには逃げを決めなければならない。22キロ地点付近で下りを利用してアタック。逃げたい選手たちに水を向けるが、タイミング悪く単独エスケープとなってしまう。意を決して単独での逃げを決行。5周目終了時、集団を200m弱リードしてゴール地点26万人の観衆の前を単独トップ通過。果敢な走りに対し国を超えた正当な応援が福井の背中を押している。

 しかし世界のトップアスリート達は福井のリードをそれ以上許そうとはしない。
 6週目、アタックをかけたあたりで再び集団に吸収される。他の選手がすぐさまカウンターアタック。しかし大きなリードは取れない。不安定な集団のまま7週目も終え最終周に。全選手がラン勝負を決意。わずかにペースが落ちて8周目終了。
 不発に終わったものの福井の一周にわたる単独逃げは今回のレースの中で最長である。
 
 フランスのフランク・ビネがトップ、福井16番手でランスタート。バイクコースと同じコースで、途中をショートカットしての一週3.3qを3周。福井1周目を10分31秒で走るものの47位まで順位を落す。2周目3周目で3人を抜き返し44位でフィニッシュ。ランスプリット33分44秒。キロ約3分22秒。

 バイクで常に前方に位置取ることを心掛け、落車などのリスクを避けると共に、他の選手たちの戦略や逃げに注意をはらい、積極的なレースが出来ていた。これからのレースが楽しみである。

雑感:
 前日の女子のレースで地元ドイツのアンニャ・ディトマーが優勝。
 男子の今回4位のダニエル・アンガー、シドニーオリンピックの銀メダリストで今回7位のステファン・ブコビック、10位に入ったセバスチャン・デマーなどのドイツ男子勢が男女両クラス制覇を狙い、バイクパートでいろいろな動きを見せていた。ディトマーと同じようにレース後“DANCE WITH THE FLAG”を踊る事はできなかったが10位以内に3人が入り、観客の喝采を受けていた。

 レース開催が6日の土曜日の午後5時30分に女子、男子は翌7日の午後2時スタートである。日曜日はデパート等の販売商業施設は法律で休業を義務付けられているとはいえ、最もにぎやかな公道を閉鎖してのイベントを主役とする時間設定に彼我の差を感じた。

 主催者発表と思えるが26万人の観客動員数も驚きである。そしてそれら観客がレースのことを良く知っていることもまた素晴らしいことであった。

優勝 Andrew Johns S-20.05 B-54.58 R-29.55 T−1:44.55
2位 Bevan Docherty S-20.18 B-54.46 R-29.59 T−1:45.03
3位 Brad Kahlefeldt S-20.01 B-55.04 R-30.04 T−1:45.10
44位 福井 英郎 S-20.08 B-54.59 R-33.44 T−1:48:52

HIDEN’S COMMENT

 約2ヶ月ぶりとなった世界レベルの大会、スタートに付くと今シーズン前半の出来事がフラッシュバックしていた。日本で言う銀座に当るであろうこのハンブルグのコースは日曜日というのに信じられないほどの観衆が押し寄せていた。見せるレースとはこのことを言うのだと肌で感じる。

 スイムはその街に沿う湖を変則2周回。気温とは対照的に水は肌を指す冷たさで18℃、ウエットスーツ着用。僕はもっとも得意としているウエットスーツであったがうまくスタートから抜け出すことが出来ず集団の中で固まりとなって泳いで行った。大きな集団から先頭で抜け出す選手も無く大集団のスイムパートとなった。流されるようにあっという間の1500Mが終了。

 人数が多いためスイムフィニッシュから一列棒状の列がいくつかに分かれバイクパートに入る。5KMを8周回、ゆるい起伏と街中のコーナーを含むスピードコース。集団が一つに落ち着いたのは約10KM地点、ここからは何度も逃げを試みる選手がアタックを繰り返し集団はほとんど落ち着くことが無かった。僕ももちろんアタックを狙っていた。約20KM地点辺りであろうか、集団が少し落ち着いたスキをつき逃げを図った! 一気に差が付いたが一人となってしまい、約1周回逃げたきりで集団に捕まってしまう。ここからはランに備え集団の中で足を休ませた。この時、自分に思いっきり興奮している自分を感じた。レースを楽しんで、集中しているその感じだった。行くぞ!

 いよいよランに入った。ランは3.3KMを3周回。バイクコースと同じコースを少しカットしたゆるい起伏のあるコース。トランジットもうまく移り集中は途切れることなくスタートした。1周回目で次々と抜かれてしまったが2周目以降は粘って走り抜いた。また慎重にトレーニングを積んでいくことがここからは必要だと感じた。この気持ちを忘れずにレースに出場し続けて行きたい。フィニッシュでは44位と結果こそ不本意であったが今シーズンでは一番良い走りが出来た。
福井 英郎